tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

所得格差の発生とキャピタルゲイン

2019年11月21日 23時50分26秒 | 経済
所得格差の発生とキャピタルゲイン
今回また、申し上げたいと思っているのは、政府が旗を振って進めている「貯蓄から投資へ」といった方向にお金の流れを進めていくと、今最も問題となっている経済的な格差社会化がますます進むのではないかという事です。

 そして、経済的な格差化が進むと、文科相の「身の丈」発言ではありませんが、格差社会が世代を超えて進む事になることは十分考えられます。
 今の政権が、誰に教わって「貯蓄から投資へ」といっているのか知りませんが、もしアメリカの真似をしようというのであれば、日本のように社会文化的に格差を好まない国民に、アメリカのような格差社会にしましょうと言っているということになります。

 世界どこでもそうですが、国民が良しとしないほどに格差化を進めると、社会が不安定になり、経済成長は望めなくなり、貧しさの中で格差だけ拡大するという最悪の状態になることが十分予想されます。

 現政権はそれを望んでいるのでしょうか。国民の不安と不満は往々にして 独裁者を生みます。まさかそんなことを考えていることはないと思いますが、どうも「由らしむべし、知らしむべからず」の様なことが多くなって (データや記録は国民に知らせる前に破棄するのが当然のようですね) 心配です。

 余計なことを書きましたが、本論に戻れば、日本のシステムでは貯蓄はインカムゲインを生む方向に動き、投資はキャピタルゲインを生む方向に動くといった形になっています。
 ここでインカムゲインというのはDGPを増加させる所得、キャピタルゲインというのは、ゼロサムの中でマネーがAさんからBさんに振り替わるだけというものです。
 この点は銀行と証券会社の仕事の違いに象徴的にみられるようです。

 お金がGDPを増やすように動けばそれには大勢の人が参加し(雇用の発生)当然賃金も発生します。
 しかしNISAで買った株が暴騰して大儲けしてもGDPには関係なくて、例えて言えば、儲けた人の口座に損した人の金が振り替えられるだけです。
 
 インカムゲインの場合は、増えたGDP(付加価値)賃金として、多くの人に広く分配されますが、キャピタルゲインの場合は、単にお金の持ち主が変わるだけで、損する人と得する人を生むのです。そしてお金が集まるのは大抵お金持ちの所という事が多いようです。

 かつて金融工学が流行ったころ「理工系の製造業離れ」などといわれましたが、優秀な学生がキャピタルゲインを追いかけるのは、せっかく教育投資をした人材がGDP作りから離れてしまう事でしょう。
 あの頃から日本経済はおかしくなったのでしょうか。

トマ・ピケティさんは、キャピタルゲインを勘定に入れなくても資本主義は格差拡大の方向に動くのがその帰結といっているようですが、「貯蓄から投資へ」のスローガンはその加速役のようです。

付加価値(生産された富)は、みんなで協力して生産するもので、今ある富をキャピタルゲインの形でAさんからBさんに振り替えることを奨励しても、日本経済も、日本社会もよくはならないように思うのですが、・・・

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